
【検証】Fader(Kathy Lien)を2006〜2026年の実データで666回試した結果
前日の高値・安値を抜けたのに、動きが続かない。いわゆる「ダマシ」は、トレンドの弱い相場で起きやすいと言われます。
Fader は、それを逆張りで取る手法として紹介されています。ただ、成績の数字はありません。
2006年以降の主要4ペアで、成績を確かめました。
この記事は、ネットや本で公開されているFX手法を、私が第三者の立場で過去データを使って検証したレポートです。手法の考案者は各出典の著者です。手法の販売や、売買の推奨を目的としたものではありません。
先に結論
判定は「要検証」でした(PF<1.2 / 統計的に有意でない / OOS PF<1.1 / PF≥1の年が60%未満)。
取引 666 回、勝率 34.8%、PF 1.05、最大DD -28.4%
1回あたりの平均損益: コストを引く前(中値)は +2.95 pips → スプレッド・コスト・スワップまで含めると +1.03 pips
期間の後半30%だけで見ると、PF は 0.84
エントリーの時刻だけをでたらめにした場合(銘柄・方向・保有期間は同じ、200回)の平均は -0.23 pips(コストを引く前)。この手法は、その96%を上回りました
判定は要検証でしたが、PF は否定的の境界ちょうどの1.05。後半の期間では PF0.84 と損失方向で、中身は否定的に近い結果です。

ここからは、手法のルール → 出典が言っている成績 → 検証のやり方 → 結果 → 考察の順に見ていきます。解釈違いの設定(variant)の比較や年ごとの表など、細かいデータは最後の「付録」に置いておきました。
1. どんな手法?

Kathy Lien の著書で「Fader」として紹介された手法です。トレンドの弱い相場で、前日の高値・安値のブレイクの失敗を狙います。
ADX(14) が35未満のときに、価格が前日の安値を15pips以上割り込んだとします。下抜けは続かないと見て、前日高値の15pips上に買いの逆指値を置きます(売りは対称)。
損切りは30pips、利確は60pips です。
本検証は、EUR/USD・GBP/USD・USD/JPY・AUD/USD に当てはめました。同じ日の中の順序を再現するため、1時間足で執行しています。
重要指標を避ける規則は実装していません。
ルール(手で再現できるように整理しました)
対象: EUR/USD、GBP/USD、USD/JPY、AUD/USD。日々の水準と ADX は NY 17:00 区切りの日足、執行は1時間足。価格は中値
条件: 前日までの日足の ADX(14) が35未満
買い: 当日の安値が前日の安値より15pips以上下に出た1時間足の確定後、前日の高値 + 15pips に買いの逆指値(その取引日の終わりまで有効)
売り: 当日の高値が前日の高値より15pips以上上に出た1時間足の確定後、前日の安値 − 15pips に売りの逆指値
損切り: 約定価格から30pips。利確: 約定価格から60pips
出典
ルールは出典の内容を私が要約したものです。原文は出典でご確認ください。
2. 出典ではどんな成績だと言われている?
統計の提示なし(USD/CAD の1例: リスク30pipsで+60pips)
主張の一覧(元のデータ)は付録に載せています。
3. どうやって検証した?
パラメータは出典の値のままです。結果を見てから都合よく調整することはしていません。出典で解釈が分かれるところは、別の設定(variant)として並べて試しました。
期間: 2006-01-01 〜 2026-09-22、対象: EUR/USD, GBP/USD, USD/JPY, AUD/USD、時間足: H1
価格データ: Dukascopy Bank SA historical datafeed, FRED / OECD Main Economic Indicators 3ヶ月金利(Bid/Ask の実データ)
約定: 買いは Ask、売りは Bid。実際のスプレッドがそのまま効きます。シグナルは足が確定してから判定し、次の足の始値で約定させています
同じ足で損切りと利確の両方に届いたときや、逆指値が足の途中で約定したときは、1分足でどちらが先かを確かめています。1分足がない期間や、1分足でも決められないときは、損切りが先だったことにしました(不利な側に倒す仮定)
追加コスト: スリッページ 0.2 pips、手数料 0.0 pips
機械的に検証するために置いた仮定や、原典との違いは付録にまとめました。
4. 結果: 判定は「要検証」

PF(プロフィットファクター)は総利益 ÷ 総損失です。1より大きければプラス、小さければマイナス。最大DD(ドローダウン)は、資産が直前の最高値からいちばん大きく減った割合です。
年ごとの損益

PF が1以上だった年は47.6%(21年中)でした。年ごとの数値は付録の表にあります。
通貨ペア別

5. 評価: 共通の基準で採点すると
後半の期間だけで見たり、スプレッドを1.5倍にしたりと、条件を厳しくしても成績が残るかも見ています。判定は、全手法共通の基準で機械的に付けました(取引100回以上・PF1.2以上・統計的に有意(同じ日の取引をまとめて検定し、解釈違いの variant は比較した数で補正)・後半30%の期間でも PF1.1以上・スプレッド1.5倍でも黒字・PF が1以上の年が6割以上 → 有望)。

基準を満たした点: 取引数 666 回、スプレッド1.5倍の PF 1.02
基準に届かなかった点: PF 1.05(基準 1.2 以上)、統計的有意性(同じ日の取引をまとめた p値) 0.5243(基準 0.05 未満)、後半30%期間の PF 0.84(基準 1.1 以上)、PF が1以上だった年の割合 47.6%(21年中)(基準 60% 以上)
p値は「本当は損益ゼロなのに、偶然これくらいの成績が出る確率」の目安です。小さいほど、偶然では説明しにくいということです。
p値をはじめ、記事の数字の意味と計算のしかたは、解説記事にまとめています: https://note.com/icekingkling/n/n22cdea430be9
6. 考察: なぜ出典と差が出たのか
トレンドの弱い日の「上抜けのダマシ」を狙う base。判定は要検証でした。
ADX35未満の日に前日の高値を15pips以上上抜けたら、前日安値の15pips下に売りの逆指値を置きます(買いは対称)。1回あたり平均+1.03pips(PF1.05、666回)でした。
PF は、否定的の境界(1.05)ちょうどです。同じ日の取引をまとめた検定では p=0.524 で、偶然と区別できません。
後半の検証期間(OOS)の PF は0.84で、直近は損失方向。PF1以上の年は47.6%でした。
機械判定は要検証ですが、中身は否定的に近い結果だと考えています。
コストを除いた中値では、平均+2.95pips(PF1.15)。エントリー時刻をランダムにした場合の96.5%を上回りました。
でも、1回あたり1.83pipsのコストで、大半が消えています。
通貨ペア別では、EUR/USD(PF1.32)がプラス、GBP/USD(PF0.89)はマイナス。AUD/USD(PF1.05)・USD/JPY(PF1.03)は、ほぼ損益分岐でした。
この手法は、前日のレンジを反対側まで一気に抜ける速い動きで約定します。そのため、約定の扱いで結果が変わります。
本検証では、約定した時間の値動きを1分足で確かめました。約定した1分足の中で損切り水準にも届いていた40回は、順序が分からないため損切りとしています。
この40回の一部が、実際には利確まで伸びていれば、成績は上がります。逆に、指標発表などで約定が滑れば下がります。
実は、出典の記述は発注位置が2通りに読めます。逆指値を前日のレンジの内側(前日安値の15pips上の買い)に置く variant(entry_near)は、取引が5,838回に増え、PF0.97・最大ドローダウン-90.1%でした。
出典は USD/CAD の1例を示すだけで、統計の数字はありません。
限界は2つあります。1つ目は、出典が勧める「重要指標の発表前後を避ける」規則を実装していないこと。
2つ目は、損切り30pips・利確60pipsという固定幅が、通貨ペアごとの値動きの大きさの違いを考えていないことです。
7. 限界と注意点
発注位置の解釈が2通り。原典(Lien 13章)で確認
まとめ
Fader(Kathy Lien)を2006-01-01 〜 2026-09-22の実データで検証し、出典どおりの設定の判定は 要検証 でした
取引 666 回で PF 1.05、1回あたり平均 +1.03 pips(実際のスプレッド・コスト・スワップ込み)
この結果は過去の期間の話で、今後の成績を示すものではありません
「この条件はおかしいのでは?」というご指摘や、検証してほしい手法があれば、ぜひコメントで教えてください。
検証レポートの数字の読み方(PF・p値など): https://note.com/icekingkling/n/n22cdea430be9
同じ基準で検証した、ほかの手法の記事も置いておきます。
80-20(Raschke): https://note.com/icekingkling/n/nc6e0e53f3062
東京時間ボリバン逆張りスキャル: https://note.com/icekingkling/n/n66b423e4c0a1
G10キャリートレード: https://note.com/icekingkling/n/n84f487d5fb97
通貨クロスセクション・モメンタム: https://note.com/icekingkling/n/nb92370577844
移動平均クロス(学術ベースライン): https://note.com/icekingkling/n/ndd03db78718b
付録: 詳細データ
variant(解釈の違い)の比較

判断は base(出典どおりの設定)を主にしています。いちばん良い variant だけを見ると、たまたま当たった設定を選んでしまいやすいからです。
年別の成績(base)

補足分析: 出典との差はどこから来たか
同じ注文を、コストなしの中値や、出典と同じ測り方(設定がある場合)でも約定させてみた結果です。t値・p値は、同じ日の取引をまとめた日ごとの損益で検定しています。
base(出典どおり)

1回あたりの取引コスト(コスト控除前 − スワップを除いた本検証): 1.83 pips(エントリー時スプレッドの中央値 0.90 pips)
1回あたりのスワップ(本検証の損益に含む。業者の上乗せ年0.5%を想定): -0.09 pips
逆指値がバーの途中で約定した取引の、約定バーの損切り判定: 1分足で判定 657 回(うち約定した1分足の中で損切り水準にも届き、順序が分からないため損切りとした 40 回)、足の値動きの順序の仮定で判定 1 回(1分足がない期間・銘柄)
同じ足で損切りと利確の両方に届いた取引: 1分足で利確が先 1 回、1分足で損切りが先 0 回、1分足がなく損切りを優先 0 回
ランダム化ベンチマーク(同じ銘柄・方向・保有本数でエントリー時刻だけランダム、中値・コストなし、200回): 平均 -0.23 ± 1.85 pips。本手法(コスト控除前 2.95 pips)はランダム試行の 96.5% を上回った
上位トレードへの依存(数量加重): 総損益 689.2 pips(666回)のうち、最大の1回は GBP_USD long(2008-03-05 建て)の 64.3 pips(総損益の 9.3%)。最大の1回を除くと PF 1.05・総損益 624.9 pips、上位2回を除くと総損益 560.9 pips
本検証での定義(機械化のために置いた仮定と、原典との差異)
S19 Fader(Kathy Lien)
出典: Kathy Lien "Day Trading and Swing Trading the Currency Market" 13章の要約(Tradingpedia「Fading Breakouts」)
ルール: 日足の ADX(14) が35未満(トレンドが弱い)のとき、当日に価格が前日の安値を15pips以上下抜けたら、
その下抜けを「ダマシ」とみて、前日高値 + 15pips に買いの逆指値を置く(当日中のみ有効)。
損切り30pips、利確60pips。
売りは対称(前日高値を15pips以上上抜け → 前日安値 − 15pips に売りの逆指値)。
原典との差異・機械化のための仮定:
- 発注位置は2通りに読めるため、出典の要約(Tradingpedia)の記述「前日高値の15pips上に買い注文」に
合わせた方を base とし、
もう一方(レンジ内に戻ったところ = 前日安値 + 15pips で買う)を variant とした
- 「当日のうちに前日の高値・安値を抜けてから反対側へ動く」順序を再現するため、1時間足で執行する
(日足の水準・ADX は NY 17:00 区切りの前日まで)
- 重要指標の発表前後を避ける規則は実装していない(指標カレンダーのデータがないため)
- 1取引日に各方向1回まで。取引日の終わりまでに約定しなければ取り消す
variants:
- entry_near: 買いの逆指値を前日安値 + 15pips(売りは前日高値 − 15pips)に免責
本記事は過去データに基づく検証結果の報告であり、将来の成果を保証するものではありません。
特定の通貨ペア・金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言を目的とするものでもありません。
紹介した手法の権利は各出典の考案者に帰属します。手法の詳細は出典をご確認ください。
投資判断はご自身の責任で行ってください。