
えこひいきされる人間になれと教えてくれた教師
私はこれまでnoteで、散々教師のことを悪く言ってきた。
世間知らず。理想主義の空想家。言いたい放題だった。
もちろん、これは本心だ。
実際に、私が育った沖縄の田舎の教師には、明らかにズレている人が多かった。
それでも、素敵な教師がいたことは、前の記事でも書いた。
今日は、その中のひとりを紹介したい。
中学校の女性教師、仮に「知念先生」としておこう。
知念先生は、とにかく社会のリアルをとことん教えてくれる人だった。
中学校のとき友達がお店で万引きをした話
高校の時先輩たちに囲まれて、輪になっていびられた話
先輩からのカツアゲから逃れるため、お金をブラジャーの中に隠していた話
マックのアルバイトでクレーマーに正論をぶちかましてクビになった話
大学時代に出会ったヤクザを救うため、弁護士を目指して毎日図書館に通い続けていた男性の話
学校で転落して死んだり、逮捕された同僚の先生の話

どれも、教科書には絶対に載っていない。
だから、めちゃくちゃ面白かった。
しかも、めちゃくちゃ有能だった。
超高倍率と言われた時代の沖縄県の教職試験に、一発で合格している。
学力が高いというより、要領が異常に良いタイプだ。
面接でも、無双していたらしい。
授業の前半、半分くらいはいつも雑談だった。
でも後半になると、ちゃんと授業の内容に戻って、きっちり終わらせる。
しかも、わかりやすい。
要領の良さは、やはり本物だったと思う(笑)
そんなある日、クラス全員と知念先生はいつものように雑談をしていた。
すると、ある数学の女性教師が、クラスによって態度を変えまくっている、という話になった。
この数学教師は、バスケ部の顧問だった。
生徒側の予想では、バスケ部員がいるクラスには優しくて、他のクラスには厳しい傾向がある、ということだった。

そんなとき、知念先生はこう言った。
「やっぱり人間だから、好き嫌いはあるもんだよ」
「それだったら、えこひいきされる人間になって、得した方がいいよ」
知念先生は、どんな目上の同僚教師にも、あまり忖度しないタイプだったと思う。
事実、知念先生のことを生徒の前で「生意気」と言う、老婆のような教師もいた。
そんな知念先生が「えこひいきされる人間になれ」なんて言うのは、意外だった。
でも、この一言で、私は気づいた。
大人も、ふつうの人間なんだ。
好き嫌いもあるし、感情で動くこともある。
それを「不公平だ」と嘆くより、うまく味方につけたほうが、ずっと生きやすい。
リアリストで要領のいい知念先生の雑談は、どんな授業よりも私の人生に役立っている。



