
酸味は、名脇役。
甘味、(辛味)、苦味、塩味とみてきましたので、酸味も考えてみましょう。
スワヒリ語で酸味は chachu と言います。
あまり単語を声に出すことは多くない印象ですけれど、 chachu をもたらしてくれるライムはいろいろなメニューに顔を出します。扉写真では右上にたくさんあります。
まずは、トマトは野菜である証明としてたいせつなカチュンバリが挙げられます。ライム汁による酸味は、メインディッシュの油っこさをほどよくカバーしてくれますし、カット野菜(そう、野菜です!)を提供まで常温で置いておいても傷まない秘訣でもあると思います。生野菜ですが、おなかをこわしたことはありません。
ニャマチョマにもスプにもリムが添えられていますし、ミワと一緒に機械でプレスされてさとうきびジュースにもなります。

日本からタンザニアに行くときに乗るエチオピア航空では、インジェラという酸味のある主食を提供してくれます。「おしぼり」とか、「まずテフをオフチョベットする」とか、変に有名ですけど、発酵による酸味があるのです。

今回、味覚より食事の話ばかりだな、と思われたかもしれません。じっさい、 chachu と口にすることは少ないと最初に書きましたし、「ライム(リム)」の比喩的な用法さえもあまり思いつきません。
日本語では「酸いも甘いも」で、英語の sour も傷む意味があることは、「苦味」のときにみました。カチュンバリでは酸味が傷むことをふせいでいると思うと、悲しい矛盾ではあります。
「甘酸っぱい」も、いいことである甘いとの対比ですから、酸味はつらいことですし、中国語も「辛酸」はつらい(NOTからい)という熟語です。
味覚としては「有害な物質の警告」なので、もっともだとは言えます。
が、酢/ビネガーも、ライムやレモンも、防腐やビタミン補充のために古来から活用されています。
そして味覚としても、現代ではカクテルからレモネードまで好まれる感覚のひとつであることを思うと、役割のわりに不遇だと思えてしまいます。欠陥のある中古車を「レモン」と呼ぶことさえあります。

けれどそうした不遇にもめげず、酸味をもたらすライムはきょうもタンザニアの食卓にいくつも添えられています。名脇役、と言えるのではないでしょうか。
スワヒリ語味覚シリーズは以下です。