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【完結枈】劙に、鳎る【神無月狂想】ep.7/11

    「井䞊 あの  」
    「僕の写真、䞀枚  撮りたせんか」
    「撮りたせん。」
    間違えた。
    「撮らねえよ」

    そもそも撮りたせんか、ずいうのはどういう意味だろうか。
    撮っおくれ、でもなく、お手隙ならば、でもなく、撮りたせんか、ずは。
    これじゃあたるで、俺が撮りだかっおいるみたい  でもないか。
    それにしたっお、どうにも奥歯がむず痒いような劙な感じがした。
    劙な感じっお、䟿利な蚀葉だ。
    最近、ずりわけこい぀ず関わり出しおからの䞀幎ず半幎で俺にずっおの「劙」のバリ゚ヌションはずいぶん増えたように思う。
    敬語で話しかけおくる同玚生ずいうのも劙、怖いだの寂しいだの平気で蚀っおよこすのも劙、そもそもこい぀の存圚そのものが、劙。
    劙ずいう文字そのものが劙に芋えおくる。
    女が少ない、で劙。
    道を歩けば女が溢れおいるのに、女ガ少ナむ劙。
    家族だっお女の方が倚いのに、女ガ少ナむ劙。
    ひっくり返すず  少女。

    最近、珟代文の成瞟がすこぶる振るわなくなったのは、こんな颚に適圓に片付けおいるせいだ。
    きっず、そうだ。

    「もっず巊 違えよ、それ右」

    煉瓊造りの塀に䞡脇を挟たれた石畳の道で、俺は癜石の写真を撮った。

    「オッケ。撮れた。」
    癜石は背負っおいた街䞊みをほっぜり出しお、こちらぞ駆けおくる。
    俺の背の偎に回り蟌んで肩に手をかけ、画面を芗き蟌んだ。
    「どう」
    颚が吹いた。
    癜石の髪が耳に圓たる。
    「完璧です。」
    昚日の旅通のシャンプヌの匂いがする。

    髪がキシキシする、聞き芚えのある蚀葉。
    それを昚日、癜石も蚀っおいた。

    「は」
    「君は、したせんか キシキシ。」
    声はくぐもりながらがんやり響き、氎音に玛れお聎き取りにくかった。
    俺は自分の髪に觊れた。
    特段倉わらない。
    い぀もの通り、䞀郚が絡たっおいる。
    その絡たりも、指で振ればすぐにほどける。
    絡たりをほどき぀぀、キシキシに぀いおひたすらに考えおいた。
    絡たりがすっかりほどけおも、思考は絡たり瞺も぀れるばかりだった。
    䞍意に、仕切り板から癜石が顔を出した。
    「なんだよ  」
    湯気ず乱芖が盞たっお、その姿はがんやりしおいる。
    「キシキシ  」
    「は」
    「觊っおみおください。」
    毛先から萜ちおくる雫が、肩に、倪腿に萜ちる。
    冷たい。

    冷たい氎玉を萜ずしおくる毛先を絞るように觊れおみた。
    癜石は笑った。
    「それじゃあわかりたせんよ。もっず、こう。」
    俺の手銖を掎むず、髪の奥の奥に指を連れお行く。
    指に髪が絡んだ。
    癜石の手が離れる。
    俺の手だけが奎の髪の䞭に取り残されおいる。
    「僕の頭を掎む぀もりで、動かしおみおください。」

    結局、キシキシのこずはわからないたただった。
    ただ、なにかしらの花を暡倣したず思しき匂いが互いの髪から今もなお挂っおいる。
    その事実だけが、劙、にくっきりず感じられたくらいで。

    手持ち無沙汰で、俺は䜕の気なしにむンスタントカメラのレンズを芗いた。
    出際に母芪が鞄に捩じ蟌んだむンスタントカメラ。
    レンズ越しに芋るず、たるで異囜に立っおいるような気持ちになる。
    映り蟌む人間が、芋慣れた姿をしおいおも。

    癜石は忙しなく文字を打っおいる。
    「぀ぐみちゃん」
    「ええ  うかうかしおいたら、もう明日には東京でしょう」
    そうだ。
    修孊旅行ももう、明日で最終日だ。
    早かった  のだろうか。
    過ぎおみれば、ずいうものだろうか。
    「仲良いよな、ほんず。」
    ずいう俺の蚀葉に、たんざらでもないように癜石は笑う。
    「俺の効なんか同じ画角に収たるこずすら嫌がるから、最近。」
    「父芪みたいなこず蚀いたすね、君。」
    癜石は携垯を閉じ、ひず仕事終えたような息を吐いた。
    「それ、幎頃の嚘を持぀父芪の蚀葉ですよ。」
    たしかに、父は嘆いおいた。
    家族写真はい぀しか女ず男ではっきりず二分されるようになっおいたし、兄効きょうだい写真もここ最近は──
    代わりにどういうわけか、ひたわり畑を背に埮笑む父だずか、慣れない手぀きで蕎麊を切っおいる父だずか、そんなようなものばかりが増えおいる。
    レンズの向こうで、これじゃあたるで遺圱だな、ず笑った父を思い出した。

    「぀ぐみもそうですよ。家族で旅行なんか行っおも、父ずは䞀緒に写りたがりたせんから。」
    「でもお前ずは  」
    「写りたせんよ。」
    「は」
    ちょっず埅お。
    この流れなら぀ぐみちゃんずお前は䞀緒に写っおしかるべきだろう。
    文脈が劙、だ。
    あたりにも、劙、だ。
    「僕のこずはいいおもちゃだず思っおいるんでしょう。」

    癜石は手に持ったたただった携垯を開いた。
    そしお、黙っお画面をこちらに向けた。
    画面の䞭の癜石は、たしかに癜石なのに肌はこんがり日に焌けお、胡散臭いサングラスをかけおいる。
    「ね」ず銖を傟けた癜石は呆れたような、それでいお、幌い子どもをあやすような、わずかに倧人びた顔をしおいた。
    初めお芋る衚情カオだった。

    「よろしければ君のお写真、撮りたしょうか。」
    「は」
    「来実くるみさんに送られおは」
    「結構だ。」
    今のは二人分の蚀葉だ。
    俺ず、効の。

    「では  」

    はず問う間もなかった。
    その間すら惜しいずいう感じでもなく、奎は極めお自然に俺に身を寄せた。
    そしお、シャッタヌが切られる。
    電子的なカシャ、ずいう音が響いた。

    「井䞊。君、たた目を閉じたしたね。」

    頬に髪が觊れおいる。
    くすぐったい。
    人工的な花の匂いが、坂の䞋から吹き䞊げおきた颚に舞い螊る。

    二床目のシャッタヌ音の埌、俺は蚀った。
    「くすぐっおえんだよ。」
    頬のずころで揺れおいる髪に觊れた。
    昚日、こい぀に教えられたずおりに。
    柔らかだった。
    指に絡むこずもなかった。

    「キシキシ、しおるでしょう」
    わからなかった。
    でも、思い出した。
    旅先で、効が䞍機嫌そうに挏らした蚀葉を。

    「぀ぐみちゃんも蚀う」
    「なにを、ですか」
    「だから  その  」
    たった今、癜石が敎えおいるあたりを指さした。
    ああ、ず奎はうなずく。

    「蚀いたすね。」
    「  キシキシ。」
    「ええ、キシキシ。」

    なんおこずのない蚀葉が、時折照れ臭くなる。
    キシキシ、を蚀い淀むなんお劙、だ。
    そんなこずを考えおいる間に、癜石は坂を登り始めおいる。
    少し遅れお俺も歩き始めた。
    「なあ、怋。」
    「はい」
    向き合っおいるせいか、奎に぀いおいっおいるずいう感芚がない。
    俯瞰しおみるず、劙、だ。
    「キシキシ、しない」
    「え」
    癜石は銖を傟げ、おどけたような笑いを浮かべる。
    「膝。」
    俺が蚀うず、癜石は薄っぺらな腹を抱くようにしお、さっきよりも倧きく笑った。
    「それ  」
    「芪父くさい」
    「ふふ  少し。」

    連日、歩きっぱなし、走りっぱなしの俺の膝はキシキシ鳎っおいる。
    荷車を軋らせ、クロネコ印の制服が俺の隣を通り過ぎた。

    「井䞊。」
    「ん」
    「付き合いたせんか」

    埌ろ歩きの癜石は、空を背負っおるように芋える。
    逆光で翳る、たっすぐな瞳を芋぀め返す。
    喉が、胞がキシキシした。
    劙、だ。
    蚀葉が、声が、぀かえお出おこない。

    陜射しが匷い。
    目を背けたくなるほどに。
    しかし、県は倪陜の前の被写䜓に杭打たれ動けなかった。
    県は逃げ氎に沈む。

    癜く透き通る黒い圱を俺は芋䞊げたたた歩く。
    膝は軋んでいた。
    自分だけに、聎こえる音を鳎らしお。


    こがれ話をひず぀。
    #井䞊ず癜石
    実はこのシリヌズ、党郚習䜜なんです。
    #殎り殎られ詩人酒堎
    や
    #氎蟺の぀぀じ
    あのあたりは脳内にある光景をそのたたストレヌトに文字起こししおいるだけなんです、実は。
    だけどそれっお、呚蟺環境だずか、その日の気分、䜓調によっおは映像が芋えなかったり芋えおいおも文字にならなかったりするんですね。
    だから、井䞊ず癜石シリヌズはストレヌトに文字起こしではなく、芋えたものからざっくりしたプロットを組みそこから文章にしお行く。
    このプロセスぞの慣れを目的ずしお始めたものです。
    おかげで完結䜜品も増えおきたした。
    が、プロット通りに曞けた詊しがない。
    たあ、いいんですけど。

    実のずころ今、この緎習をしおいたら長線䞉本思い぀きたしお。
    流石に同時進行無理だな。
    そんなずころです。

    さあ、蚀い蚳はおしたいだ

    ↓修孊旅行、井䞊線

    ↑
    ここで党郚読めたす。

    ↑
    癜石線から、特に読んでもらっおいるもの。

    ↑これはかなりたくさん読んでいただいおいるもの。

    ↑
    【゚ッセむ】
    今幎も実家ではピヌマンが実っおいた。
    が、これは去幎の話だ。

    ↑
    ゆきお様・解説
    なんか癜石、近くねの今回。
    そのわけは

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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