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【完結枈】淡く、透ける【神無月狂想】ep.8/11

    「おそろいにしたせんか」
    「なんでだよ。」

    癜石はテヌブルに䞊べられた色も圢もさたざたの风现工のようなものに芋入っおいる。

    「ああ  僕たちがっおこずではなく  」
    その䞭からひず぀摘み䞊げた。

    「効たち、、、の。」
    自分の暪髪にかざし、口角を䞊げる。
    「バレッタ、ずいうそうです。」

    そう蚀うず癜石は、そのバレッタずやらを俺の耳䞊ぞ寄せた。
    五片の花匁をも぀野の花を暡かたどったのだずいうバレッタは、至極圓然のこずだけれども、俺にはたったく䌌合っおいなかった。

    「なあ、怋」
    「はい」
    「念の為聞くけど、これ、俺たちがっおこずじゃないんだよな」

    はっずしたその顔に、自分で蚀ったくせにず返しおやろうず思ったのに蚀葉が出なかった。
    鏡の䞭、花の圢の髪食りをあおがわれた自分の姿があたりに可笑しくお、笑いが止たらなくなっおしたった。
    ただでさえ熱い身䜓は、䜙分に熱くなった。

    店の䞭は、ひんやりしおいる。
    玺色の暖簟の先は、倖の陜の匷さを感じさせない、䞋界ずは隔おられた空間。
    入口のすぐ暪には工房があっお、職人の仕事を間近に芋るこずができた。

    誰かの宝箱をこっそり芗き芋しおいるみたいで、どうにもくすぐったい──ずいうのは癜石の受け売りだが、たしかに、奥ぞず進むほどに犁忌ぞず近付く感芚に襲われ身慄いした。
    前を行く癜石の背に、「もうやめよう」ず蚀いそうになるのをかろうじおおさえおいる。

    そうだ、お菓子の家だ。
    林立する棚には茶ずも、黒ずも、黄ずもずれるもの──秋を煮詰め、冷やし固めお倕陜に翳したような色  たしかに、癜石はそう蚀っおいた──の数々が所狭しず䞊べられおいる。
    䌌通っおいるようでひず぀ずしお同じものはなさそうだ。
    しかし、やはりどう芋おも风玉なのだ。
    眺めおいるず、舌の䞊が甘くなる。

    ──ヘンれルずグレヌテル。
    賢い効ず、ちょっず間抜けな兄の話。
      だったよな

    棚の森を抜けるず、芖界がひらけた。
    癜い垃が敷かれたテヌブルが眮かれおいお、その䞊に风现工に䌌たものが、蠱惑こわく的に䞊べられおいる。
    カヌテンの隙間からさす光ず、テヌブルの䞭倮に眮かれた蝋燭を暡した照明に透かされお、色ずりどりの圱が揺らめいた。
    癜石はひず぀ひず぀手に取っお眺めおいる。
    手に取っおは光にかざし、裏返し、角床を倉える。

    「なあ」
    「はい」
    「䜕芋おんの」
    「䜕っお  」
    ようやくこちらを向いた癜石の目は、いやにたっすぐ俺をずらえおいる。
    「井䞊。君、おかしなこず蚀いたすね。」
    癜石は、くっず、空気を飲み蟌むような笑い方をした。
    「錈甲べっこうですよ。錈甲のお店なんですから。」
    「いや、そうじゃなくお  」
    そこから先を、俺は蚀い淀んだ。
    ただ奎はこちらを向いお、小銖をかしげおいる。
    「ほら、これなんかどう。なかなか  」

    俺は癜石の手の䞭の品  に぀けられた倀札を盗み芋おいた。
    さっきだっお、奎に倣っお品物を眺め぀぀も、䞀番長く芋぀めおいたのは倀札だ。

    四千䞉癟円  
    二千二癟円  
    䞉䞇八千円  

    ふいに、バむト先の倧孊生の顔が脳裏を過よぎる。
    たかだかふた぀しか倉わらないのに、俺より䞉十円もいい絊料をもらっおいるあい぀  
    そのくせ、皿掗えだの客が喧嘩しおいるからなんずかしろだの、子どもがゞュヌスひっくり返したから行っおこいだの偉そうにしやがっお  

    ──こちずら最䜎賃金だぞ

    「井䞊 なにか、蚀いたしたか」
    「いや、䜕も。」
    「そうですか。」
    盞倉わらず、癜石はお土産遞びに倢䞭だ。
    「そんなこずより、これ。」
    差し出された手のひらを芋る。
    「亀  」
    风色の小さな亀が、癜石の手にちょこんず乗せられおいる。
    「  か、かわいい  ね。」
    正盎な感想だ。
    嘘停りのない。
    だが  

    「亀からできおるんですよ。」
    「ん」
    「ですから、この亀、亀からできおいるんです。」

    ここでも俺は、亀の銖に巻かれおいた倀札に目がいっおいた。

    亀から亀の謎よりも、倀札を気にする自分のせせこたしさが嫌になる。

    ずはいえ、俺にははたける倧枚タむマむがない。

    癜石があれやこれや話しおいたけれど、そのほずんどは耳には入れど頭には届かず消えおいった。

    「俺、これにする。」
    結局、店の䞭で䞀番、手頃な倀段のものを遞んだ。
    独り蚀ず化した俺の蚀葉は、森の土に吞われる雚の劂く消えおいった。
    汗は䟝然ずしおひかず、シャツの䞭でベタ぀きながら背を぀たい萜ちおくる。

    「決たった」

    癜石は答えなかった。
    たぶん、いや、確実に届いおいないのだ。
    俺の声が。

    額の汗をシャツの袖で拭う。
    癜石はただ、錈甲现工を眺めおいた。

    手持ち無沙汰になった俺は、店の䞭を芋枡した。
    床に萜ちる自分の圱も、どこずなく茶に透けおいるような気がする。

    倧きな鯉が泳いでいる。
    风みたいに透き通った倧きな鯉。
    実物の五、六倍はありそうな鯉の眮物。
    どこぞの倧豪邞に玄関にでも食られおいそうなシロモノ。
    亀で䜜られた鯉、なんお皮肉だ。
    いや、亀で䜜られた亀、よりはいいか。

    䞉人組の海倖からの芳光客が暖簟をくぐったずころで、ようやく癜石が珟れた。

    「君、もう決たりたした」
    本圓に俺の声、聎こえおいなかったんだ。
    俺は巊手を振った。

    「あ、それ  」
    癜石は駆け寄っおきお、俺の巊手の品をたじたじず芋぀めお蚀った。
    「どこにありたしたか  」
    今床は俺が前に立っお棚の森を進んだ。
    ここ、ず指した堎所には花や菱のモチヌフがあるのみだった。
    「これがいいの」
    俺は自分の巊手のものを癜石に枡そうずした。
    奎は銖を暪に振った。

    「同じもの  ありたす」
    そばに立っおいた店の人に蚊いおみた。

    「同じものはないんです。」
    そう蚀い぀぀、その人は棚の䞋の箱を開け、手招きをした。
    「同じ圢に切り出したものなら  」
    俺が手に持っおいるものず同じ圢がいく぀も入っおいた。
    氎の粒のような圢に切り出された錈甲。
    重なり合い、互いを透かしながら色を濃くしおいる。

    「これがいいです。」
    癜石が手にしたヘアピンに぀いた食りは、俺のものよりずっず淡い色をしおいた。
    ちょうど、陜にあたった時のこい぀の髪の色に䌌おいる。
    そういえば、぀ぐみちゃんもこんな髪の色をしおいた。

    包んでもらうずき、店の人に「恋人ぞの莈り物か」ず蚊かれた。
    どういうわけだか蚀葉に詰たった。
    「僕は効に。」
    そう答えた癜石の暪顔に、俺は䞍甲斐ない気持ちになった。
    芋栄か、意地か、停りか。
    わからなさが混じり合っお枊を巻いおいた。

    店を出るずただ陜が高く、石畳が光を癜く匟き返しおいた。

    「井䞊。」
    「ん」
    「お付き合い──」

    あ、ず声を挏らしかけた。
    薄暗さのあずだかだろうか。
    陜の光が目に沁みる。

    「お付き合い、ありがずうございたした。」
    雑螏の䞭、声は圱よりもくっきりず茪郭を持っおいる。
    「君がいおくれお助かりたした。」
    癜石の笑顔が、がやけお芋えた。
    「僕ひずりだったら、すっかり日が暮れおしたうずころでした。」
    「だろうな。」

    癜石が胞に抱える癜い小さな玙袋。
    照れ臭いから俺は鞄の䞭に入れおしたった。

    「お腹、すきたせん」
    振り向いた癜石の髪の色は盞倉わらず淡く透き通っおいた。


    #井䞊ず癜石
    修孊旅行線(井䞊ver.)も終盀でございたす。

    ↑
    過去䞃本。

    ↑
    癜石の䜜文やそれ以倖の井䞊ず癜石の物語を党お詰めたマガゞンを䜜りたした。

    ↑
    そろそろ再開したす。
    倧正時代の文孊青幎・䞊原朔也のお話。

    ↑
    十六歳の高校二幎生の目線で描く第二次䞖界倧戊。

    ↑
    図曞通にた぀わる話。

    ↑
    【゚ッセむ】
    ど偏芋゚ッセむ。

    ↑
    ゆきお様・解説
    事実を、そのたた。
    わかりやすく噛み砕く。
    そしお想像をする。
    新しい解説曞。

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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