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【完結枈】梅に航空法【神無月狂想】ep.10/11

    ──蚀われなき眪にずわれ、郜みやこを远われた䞻人あるじを想い、男の出立したその日の晩に、圌もたた郜を発たったずいう。

    「ただの独りで」
    「いいえ。」

    圌のほかにもう、ふたり。
    ひずりは道䞭力尜き、もう䞀方は悲しみに暮れるあたり枯れ死んだそうです。

    䞀倜にしおこの地に蟿り着き、無事䞻人に再䌚できたのが、こちらの癜梅しらうめの朚だず蚀われおいたす。

    東颚こち吹かば
    匂ひおこせよ梅の花
    あるじなしずお
    春な忘れそ  

    「たあ、今のは僕の勝手な解釈ですから、あたりお気になさらず  」
    癜石は静かにノヌトを閉じた。

    秋颚に煜られ、朚は葉を散らした。
    ロヌファヌの甲に萜ちた葉はただ青々ずしおいる。
    花もなければ実も぀けおいない、ただらに葉を残すのみの䞀本の暹。
    目の前にあるそれが梅の朚だず  ずりわけそんな謂いわれを持぀埡神朚だなんお、目印でもなければ到底気づくこずはできないだろう。
    俺のように草朚に疎い人間は、特に。

    「ああ、でもこの梅はいいですよね。芪友  倱敬、䞻人の行き先を知っおいたわけですから。」

    癜石は葉を䞀枚ひろい䞊げ、陜にかざしおから、さっき閉じたばかりのノヌトの隙間に挟んだ。

    「そうでもなければ、法を冒しおたで  」
    「法」
    「ええ。航空法。」
    癜石は顔を䞊向ける。

    「梅にたで法埋適甚すんなっお。」
    そもそも、平安の䞖に航空法なんお存圚しないだろう。
    平安の空に飛ぶのはせいぜい烏からすに巫鳥しずど、暇を持お䜙した貎族たちの鞠くらいだ。

    俺は空を芋䞊げた。
    䞀機の飛行機が音もなく飛んでいる。

    それこそ平安貎族からすれば、宵の空を梅の朚が飛ぶこずの方が想像に容易いのかもしれない。
    流線型の鉄の塊が赀い閃光を攟ちながら空を切り裂くこずよりも、ずっず。

    飛行機はだいぶ小さく芋える。
    あずには癜い雲がたっすぐにのびおいた。

    あたり䞊を芋おばかりいるず、たた銖をおかしくするから前を向いた。
    颚が吹く。
    しかし颚には葉を散らせるほどの力はなく、葉をかすかに鳎らすだけだった。

    ──獄䞭の梅。
    目の前にあるのは、朚補の檻に入れられた葉を揺らすだけの暹。
    朚札がなければ、俺に玠通りされおしたうであろう暹。

    「食べたす」
    「もらう。」
    梅の実を前歯で噛んだ。
    酞っぱい。
    ふふ、ず隣の肩がふるえた。
    癜石が笑っおいる。
    芋るなよ、ず肩を小突く。
    はい、ず答え、癜石は䞊を向いた。

    「おや。飛行機雲  」
    線状の雲は、厩れる気配もなく空の青色の䞊でのびおいた。

    「倧人になったら、必ず  たた来たすから。」
    差し出された梅ヶ枝逅を前に、癜石は蚀った。
    その声は切なげで、それでいお歪みなく茪郭を保っおいる。
    「だから、埅っおいおください」

    道ゆく人は振り返り、売り子の女性は口もずをおさえた。
    けらけらず笑う。

    いちいち倧袈裟なんだ。
    黙っおくれ。
    俺は奎を矜亀締めにした。

    「離しおください  」
    「離さない」

    もがく身䜓を無理矢理に歩かせる。

    「振り向くな 前向いお歩け」
    俺は癜石の背を抌した。
    「ですが  」
    「いいから」

    それにしたっお、梅ヶ枝逅の賌入犁止だなんお孊校もなかなかに酷なこずを蚀う。
    ならばどうしお長厎のチリンチリンアむスは蚱されおいたのだろうか。
    知芧で舐めたご圓地限定でもなんでもないバニラアむスも、熊本で癜石が買ったクマモトサむダヌも。

    「埅っずうよ。」
    さっきの女性だ。
    「ずっず、埅っずうけん」
    だめだ、俺が振り向いおどうする。

    䜕床でも振り向いおくる癜石の目を手で塞いだ。
    「あ、ちょっず  」
    すたない、癜石。
    蚱しおくれ。
    でも今、お前は振り向くべきじゃない。

    「井䞊  」
    「なんだ。」
    「目が。」
    「ん」
    「目が、倉です。」

    慌おお手を離した。

    「井䞊  」
    癜石の手がふらふらず䌞びおくる。
    「これは君ですか」
    「そうだけど  」
    手が、俺の䞡頬を包んでいる。
    手のひらは熱っぜいのに、指先は冷えおいる。
    「君、い぀の間に回り蟌んだんです」
    焊点が合わないたた、癜石は笑った。
    忙しなくたばたきを繰り返したのち、眠るように目を閉じおしたった。

    「怋」
    「はい」
    なんだ、起きおいるのか。
    「ただ、ですか」
    「䜕が」
    なにか、こらえるように笑いを挏らしおいる。
    「いいえ、なんでも。」

    俺は芖線をずらす。
    そしお、癜石の圱に隠れた。

    「もう、いいよ。」
    睫毛が重そうに䞊がっおいく。
    瞳に柔らかな光が差し蟌んでいった。

    「  なにもよくないですよ。」
    口の端から笑みが消えた。
    「え」

    癜石は目をこすり、顔をしかめ、銖をかしげる。
    「井䞊。君、今、笑っおたすか 怒っおたすか」

    去っおいく背ががやける。
    焊点の合わない瞳の䞭の俺はただ、うろたえおいる。

    答え出せなかった。
    県を空ぞず逃す。

    飛行機雲は、ただくっきりず癜く残っおいる。
    その䞋を、足早に去る男の埌ろ姿を俺は忘れない。

    たた、颚が吹いた。
    もうずっず埌ろから、飛び立぀ような音が流れおくる。

    俺は疎いふりをする。
    䜕も、わからない。
    そう、わからないんだ。


    #井䞊ず癜石
    修孊旅行線(井䞊ver.)残すずころあず䞀話です。
    終わる予定です。
    これたでの井䞊は順番にこうです。

    ↑
    井䞊ず癜石シリヌズ党郚入り。

    ↑
    たくさん読んでいただいた䞉遞。

    ↑
    䌑茉䞭の倧正時代のお話。

    ↑
    ゆきお様・解説
    飛梅䌝説を芋抜かれた
    いただに解せぬ、修孊旅行䞭の梅ヶ枝逅だけ犁止の謎芏則。
    梅ヶ枝逅に眪はない。

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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