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虚数の恋人 #きのこ書店 #ショートショート


    「存在するはずがないのに、私の心には確かにいる。」


    私は、手のひらの赤い星のカケラを見つめた。

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    私には、夢中になっている人がいる。

    でも、その人はこの世界には存在しない。

    虚数単位 i、そして √−1。

    実在しない数が数学の世界を広げるように、私の恋も想像の中で広がっていく。

    ある夜、私はあの人を追いかけて、古い鏡の前に立った。

    鏡の向こうには、星座と数式で形づくられた恋人がいた。

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    そっと指を伸ばす。

    触れそうで、触れられない。

    その瞬間、鏡が青く輝いた。


    気づけば私は、虚数の世界にいた。

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    空には数式が流れ、三日月が逆さまに浮かんでいる。

    私は夢中で踊った。

    あの人と指先が触れるたび、赤い星が生まれた。

    ずっと、この世界にいたい。


    そう願った瞬間。

    ハッと気づくと、いつもの部屋。

    私は冷たい鏡に頬を寄せた。

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    「……もう一度、会いたいな」

    それでも、私の熱は冷めやらない。

    だって、手のひらにはまだ、赤い星が輝いていたから。


    (395文字)

    #きのこ書店
    #虚数の恋人
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